日本人は長生きだ。女性の平均寿命は世界一、男性も世界四位という長寿国である。
平均寿命、日本人男性 初の80歳超え 女性は86.61歳 2年連続世界一
”2013年の日本人の平均寿命は男性80.21歳、女性86.61歳で、いずれも過去最高を更新し、男性が初めて80歳を超えたことが31日、厚生労働省の調査で分かった。国際的な比較では女性は2年連続世界一、男性は前年の5位から4位に上昇した。同省はがんなどの死亡率が低下したことが要因とみている。”(日本経済新聞)
因みに、1999年時点で世界の人類の平均寿命は66歳であった。現在は多少それよりも改善されていることだろう。
しかし、上図を見ていただくとわかるのだが、100年ほど前、世界の平均寿命はたったの31歳であった。日本ですら44歳である。100年前といえば、われわれの祖父や祖母が生まれる少し前の時代だ。(上図:社会実情データ図録)
人類は今と比べてはるかに短命だった。
近代になり、大きく平均寿命が改善されたことの原因は乳幼児死亡率が低くなったこと、および、緑の革命による食料供給の安定化だと言われる。
特に、乳幼児死亡率については改善の幅が非常に大きい。
”1950年頃には富裕国の乳幼児死亡率は 2~ 3%となったが,それ以前は20~30%だった”(国立社会保障・人口問題研究所)
また、1950年台以降の寿命の20年以上の伸びは、大きくは医療技術の改善による寿命の伸びである。
”現在,先進国の寿命に影響を及ぼす最大の特徴は,高齢者の死亡率低下である.1960年代後半までは高齢者の死亡率は緩やかに低下,あるいはほとんど低下していなかった。
従来は,若年者の死亡率低下速度の方がはるかに高かったが,1970年頃から高齢者層における死亡率低下のペースが顕著に加速してきた.このように,1960年代は,急性感染症の減少を主要因とする若年者の寿命伸長の時代から,高齢者の慢性退行性疾患が減少する時代へのターニングポイントとなっているのである。”(国立社会保障・人口問題研究所)
データ分かる通り、現在生きている我々は、人類がかつて経験したことのない「長寿」の世界に生きている。
しかし、それにわれわれの社会的慣習や意識はキャッチアップできていない。
近代まで「働きがい」であるとか、「仕事の面白さ」といったものは、ほとんど意味がなかった。生きるために働く、それでよかったのである。
子供はたくさん生まれ、たくさん死に、そして、人は60まで働けば、もう残り僅かの余生を送る、という生活だった。
今は違う。
現在は、子供は少なく、人は長期間働き、余生は長い。社会そのものが、100年前とは大きく違ってきている。
「職業」や、「働き方」、「お金」、「健康」。そういったものが問題になるのも、すべて、根底はこの寿命の伸びにある。「少子高齢化」と言うのは、他人事ではない。いま、人類が初めて直面する「人のあり方」への強烈な変化である。