官僚化、という言葉はあまりいい意味で使われていない。現在の国家は官僚の存在なしには動かないとは思うが、とにかく官僚には堅苦しいイメージがあるのか、融通がきかないイメージがあるのか、それとも保守的なイメージがあるのか、企業においては「官僚のように振る舞う」ことは避けるべきこととされている。
Facebookは官僚化に抵抗している、という記事がある。かれらは、ゼロックスやマイクロソフトのようになるのを恐れているのだという。彼らは急激な組織の拡大による企業カルチャーの官僚化を防ぐために
- オフィスを連絡通路で全てつなぐ
- 社長を公開会議で質問攻めにできるようにする
- 別のグループの関係のない人々と昼食をとることを奨励する
- 異なるスキルを持った人々を強制的につなげようとする
- 肩書きで呼ぶことを禁じる
- コンピュータ・プログラミングのイベントを定期的に行う
などの取り組みを積極的に行なっている。
私はこれらの取り組みがうまくいくことを願っているが、今ひとつピンと来ない。それは、官僚化の真の原因は「規模」ではないからだ。組織の官僚化は小さな組織でも十分に起こりうる。
組織の官僚化の本当の原因は、「驕り」と「無関心」にある。
だから、組織の官僚化は、「組織の上部から起きる」事がほとんどだ。
すなわち、「現在の成功」に驕ってしまい、トップ、もしくはその周辺の経営陣が、「人の話を聴かなくなったり」「イノベーションを起こすことを怠ったり」することにある。要は怠け出すのだ。
新しいことを組織として生み出していくためには、組織にある程度の「揺らぎ」、すなわち「遊びの部分」が必要だが、往々にして、上のようになった経営者は「ムダを排除し」「効率よく」経営を行うことにこだわり出す。
その結果、「成功した商品」に固執する。また、そのような変化に対して経営者に対して不満を持つ人々、価値観の合わない人々を次々に排除する。当然である。すでに成功しているものに、あるいはインスタントに売上が上がりそうなものに、資源を投資することが最もムダがない。
しかし従業員はどうなるか。「上がやるからいいや」と言って、徐々に「会社の行く末」について自分達で考えることをしなくなる。「無責任」の始まりである。こうして、組織は官僚化し、イノベーションは起きなくなる。
Appleは少し前、iOSの責任者だったフォーストールをクビにした。CEOと合わなかったことが最大の原因のようだが、内部が官僚化しつつあるのかもしれない。そういえば、Appleは最近イノベーティブではない。
ライフネット生命の出口社長は、「「ハトが選んだ生命保険に入る」という企画に全面協力」したという。
その企画を持ち込まれた際は、「アホか」と言ったが、その社員に「だから伸びないんですよ」と怒られ仕方なく参加したところ、ネットで評判となり、マーケティングとして成功した。
ライフネットが官僚化していないか、と言われればそれは組織の外部からはわからない。
しかし、組織の一従業員に対して、社長が「私よりもよくわかっているかもしれない」という姿勢を示していることは、組織の官僚化を防ぐことに大きな貢献を果たしているのではと思う。
したがって、マーク・ザッカーバーグがいくら従業員の質問を受け付けようが、「オレのほうが上で、オマエら従業員は下」というような態度であったら、質問など誰もしたくない。いずれ従業員は「無責任」に邁進する。
組織の経営者、幹部が「従業員のことを見下す」あるいは「下からはいい案が出ないので、我々が考えなくてはいけない」、「オレの手柄だ」などと思っている組織に官僚化を避ける事は出来ない。
いずれ組織は、「プライド」と「セクショナリズム」が跋扈する伏魔殿となろう。