意外に思われる方も多いかもしれないが、真に有能な上司は、概ね「私の言うとおりにやらない部下がほしい」という。
ある中堅製造業の部長、彼に言わせれば、
「何も案を出さず、行動もしない人材は三流。」
「アイデアは出さないが、私の言ったことをきっちりやり切る人材は二流。」
「私の言ったことに対して自分の代案や改善案を提示し、それをやり切る人材が一流。」
彼はこうも言う。
「もちろん「言われたとおりにやらない」と「許可を得ずにやってしまうこと」は全く異なる。会社は組織であるし、権限も決まっているので、勝手な動きには罰を与える。
だが、こういうやり方のほうが良いと思います、と私に許可を求めに来るのは大歓迎だ。私は、その意見がイマイチな案であると思うことも多いが、Noと言うことはまずない。」
彼は 続ける。
「そして、面白いことに「イマイチな案だな」という私の予想はあまり当たらない。イマイチと思った案がとてもうまく行くこともあれば、「いいんじゃないか」と思った案が鳴かず飛ばず、ということもよくある。
実際、実務は現場のほうが遥かに良く知っている。好きなようににやらせるほうが、お互いにとって生産的なのだ。」
しかし、彼も昔は
「自分の言うとおりにやらない部下」に腹を立てていたという。
「なんだか、部下にバカにされたような気がしていました。軽視されているのではないかと。でも、全くそんなことはなかった。私に自信がなかっただけですね。
むしろ、私の言ったとおりにしかやらない人は、施策がうまくいかなかったとき、上司である私の責任にしていました。当然です。「私が考えたのではないから」と言います。
でも、面白いことに上司の言うとおりにやらない部下は、本来は上司の責任なのにもかかわらず、「私の責任です」と言います。このちがいはとても大きいです。当事者意識というか、責任に対して真剣というか」
ユニクロの柳井氏は、「プロフェッショナルマネジャー」という書籍の書評を書いているが、その中で、一番いい会社とは、
「社長の言っていることがその通りに行われない会社、社長の言うことをすべて真に受けて実行していたら、会社は間違いなく潰れる」
と述べる。
真に有能な上司とは、このように考える人物なのだろう。
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(Photo:cgc76)