「自分で決めなさい」
彼は、事あるたびにそう言われて育った。
彼の両親はふたりとも極めて有能だった。父親は食品の商社を経営し、母親は大学教授で医師。その一方で、彼らは子供の教育に大きな力を注いだ。
二人の口癖は、子供にこのように言うことだった。
「自分で決めなさい、そのために必要な情報は、全て教える。私たちに聞いてもわからないことは自分で調べなさい。調べ方のアドバイスは喜んでしよう。」
彼は、小学校入学とともに、すべてを自分で決めるように言われた。
- 小学校に何を持って行くべきか。
- 宿題をやるべきか。やるとすればどのようにやるか。
- 中学受験をすべきか、塾に行くべきか
- どのような本を読むべきか
- ゲームをすべきか
- 遊ぶべきか
そして、親は彼が決めたことには、どのような結果になろうと一切口を出さなかった。だが、彼が困って相談した時は、全力でそれをサポートした。
もちろん、彼が小さい頃は、「わからない」といっていろいろなことを投げ出したこともあった。夏休みの宿題を「やらない」と決めた時も、親は一切口を出さず、彼の言うがままに任せた。結果、彼は学校で恥をかき、先生にひどく叱られた。
先生が見かねて両親に「お子さんに宿題をやるように言って下さい」と依頼した際も
「うちの子供が自分で決めることです。その代わり、結果については責任を取らせて下さい」とはねつけたそうだ。
彼は悩んだ。「なぜ、うちの両親は私の事の何も決めてくれないのだろう」と。友達は両親に「あれをやれ」「これをやれ」と、教えてもらっているのに。
そしてあるとき、彼はテストで不正をした。不正は当然、先生の知るところとなり、先生は両親に「お子さんがカンニングをした」と、知らせた。
両親は一言も怒りの言葉を発せず、彼に言った。
「このまま不正を続けるか、不正をせずに正々堂々と取り組むか、自分で選びなさい。選択の結果が人生を作る。ただし、お前に言っておこう。不正を繰り返す人間の周りには、不正を繰り返す人々が集まる。お前が今後どのような人々と交わっていきたいのか、よく考えなさい。」
彼は自分で考え、「不正をしない」ということを選んだ。そして、彼はそこから突然気づいた。
「そうか、自分の人生は、自分しか決めることができないのだ。」と。
そして彼は変わった。自ら勉強し、望みの学校へ入り、大学は海外へ奨学金をとって留学した。彼は常に成績上位であり、遂には望みの職業についた。
それは、彼が自分で選択したことだった。彼は、「自分で選択したことが、自分の人生をつくっている」と確信した。
彼は言う。
「私が両親から教えてもらった、人生を後悔しないための3つの大事なことは、
「自分の頭でよく考えなさい」
「自分で選択しなさい」
「責任を引き受けなさい」
という、本質的な原則だ。
「決める力」は訓練しなければ身につかない。時にはつらい選択もある。でも、「自分が選んだ」と思うことが、一番大事だとおもう。子どもたちにも、伝えていきたい。」
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