「あたりまえだけど、「楽しそうに働く人」がいる会社と取引したいよね。」と、ある中堅企業の経営者は言った。
「なぜですか?」と聞くと「仕事を楽しめていない人は、仕事の質が低いから」と彼は答えた。
「具体的には何をしているのですか?」と聞くと、彼は
「僕は取引先を選ぶ時、仕事の質を判断するため、目の前にいる営業や技術者に「会社での話」を聞くんだよ。」と言う。
「会社での話?……というと?」
「簡単なことだよ、目の前の人の会社のマネジメントの方法を聞くんだよ。特にその人の上司の。」
「商品や技術ではなく?」
「そう。」
「なぜですか?」
「その人がどんな気分で仕事をしているか、それを聞くとわかるから。」
私はもう少し話を聞きたくなった。
「例えば、どのような話を聞くのですか?」
「そうだね、目標値はどのくらいか、とか、人事評価はどのように行われているか、とか。あとは、どんなアドバイスをもらっているか、とか。」
「そんなことで仕事の質がわかるんですか?」
「かなりわかるよ。」
「どのように判断するのですか?」
「まず、営業なら「目標達成ってどれくらいキツいの?」とか。」
「技術者なら?」
「いつも何時頃帰ってる?とか。疲れている人はダメだね。」
「他には何を聞くんですか?」
「人事評価の面談のやり方とか、「ウチの参考にしたい」というと、喜んでみんな教えてくれるよ。」
「どういった話がありましたか?」
私は身を乗り出した。
「この前も「実は目標がキツくって…」という話を聞いたよ。」
「どんな話でしたか?」
「いや、単純だよ。営業のノルマキツめで、目標達成できない人がほとんどっていう、良くある話だよ。」
「問題ですか?」
「まあ、お客さんへの配慮は甘くなるわな。」
「ああ…」
「マネジメントや会社の目標に対する方針はホント、重要だよね。人を追い詰めるるマネジメントは、商品や顧客へのサービスに必ず悪影響がある。」
「なるほど…営業の方は何を言っていましたか?」
「その営業の人の会社では、最近かなりチャレンジングな目標を掲げたらしい。で、「最初から無理だとわかっている目標」に挑まされる営業マンの気持ちを想像した。まあ、仕事は楽しめないわな。
その会社の中身も聞いたけど、まあダメなんだわ。辞めてる人も大量に出たらしい。経営者として、高い目標を掲げたくなる気持ちはわかるけどね。現場にこんなに影響が出るのは失敗と言わざるをえない。」
私はいくつか同じような状況で思い当たる会社を思い浮かべた。
「そうですか……」
「営業が上機嫌で働けなくて、どうしてお客さんを上機嫌にできる?追い詰められたプログラマーが、バグの少ないシステムを作れるとは思えないだろう?」
言われてみれば、そうかもしれない。
「そうですね。上機嫌な人たちと働きたいですね。」というと彼は、
「ウチもそういってもらえるように経営しなくては。」と、笑った。
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