先日、新宿でとある天丼チェーン店に入ったら、店員さんが全員外国の方だった。

飲食店で外国の人が働いている姿を見かけることは珍しくないが、大抵の場合、一人は日本人スタッフがいる。しかしこのお店は100%外国の方だった。  

 

 

身近になったグローバル化

私は彼らの様子を観察した。厨房の人は日本語のマニュアルを見ながら器用に天ぷらを揚げ、他の人は流暢な日本語で談笑しながら接客をしていた。

「さすが日本を代表するインターナショナル・シティ、新宿だなぁ」と感動して周りを見渡すと、お客さんの3割くらいも外国人だと気付いた。

アジア系、アフリカ系、欧米系、中東系。それはそれはグローバルな光景だった。

 

  “グローバル化”という言葉を最初に習ったのは、おそらく中学生の頃だっただろうか。約15年ほど前はまだまだ教科書の中の言葉であったグローバル化も、今では新宿の天丼屋で肌で感じることができる

 

 

日本で働く外国人は年々増えている。

厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況まとめによると、平成26年10月末時点で外国人労働者外国人労働者数は約79万人。前年に比べ9.8%増加している。

外国人労働については賛否両論あるがその議論は別の機会に譲るとして、今後も外国籍の働き手が増えることは自然な流れだろう。

 

日本にいながら外国の文化や人に出会えるのは、個人的にとても嬉しい流れである。

しかし、こと働き方に関しては、我々に一体どのような影響があるのかきちんと考える必要があると思った。  

 

 

グローバル化が私たちに与える影響

日本はどの業界も人手不足に陥っているが、特に飲食業界、建設業界、介護業界、IT業界は深刻である。

 

コンビニ業界では外国人雇用が進んでおり、都内のコンビニはほとんど外国の方がレジに立っている。

彼らの多くが日本語学校の留学生である。留学生が労働目的で滞在することは違反だが、週28時間までは働くことが認められている。中には留学という名目(学生ビザ)で入国したが、事実上は”出稼ぎ”として働き自国へ送金する人もいる。

日本語が話せ、業務遂行力も問題なく、さらに「お金を稼ぎたい」というハングリー精神まで備わっていれば従業員として積極的に採用したい存在だ。

 

ITエンジニアも同様である。日本語が多少できずとも、技術力があれば魅力的な人材である。

加えて日本人の3分の2の人件費で採用できるならば一石二鳥。将来の海外展開も見据えて、あえて外国人を選ぶ企業も増えている。  

 

 

そんな時代に私たちはどう働いていくのか

ほんの30年ほど前まで、日本は男性しか働けない時代だった。それが今ではだいぶ女性の社会進出も進んだ。

性別だけでなく、国籍も問われず純粋に個人として勝負する世界がもうすぐそこまで来ていると感じざるをえない

 

そんなグローバルな時代に、私たちはどのように働いていくべきなのだろうか。  

 

世界的ベストセラーである『ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図』(プレジデント社)著者のリンダ・グラットン氏は、明るい未来を築くには「仕事の世界で必要な3種類の資本」を持つことが重要と提唱している。  

「仕事の世界で必要な3種類の資本」

一つ目は知的資本。自分よりも早く、安く、上手に同じ仕事を行える人が何千人もいる世界では、知識と知的思考力によって自分を差別化することが重要である。

二つ目は人間関係資本。強く幅広い人的ネットワークを持つことが重要である。

三つ目は情緒的資本。「自分自身について理解し、自分の行う選択について深く考える能力」と「勇気ある行動をとるために欠かせない強靭な精神」を持つことが重要である。

 要は自分の強みを把握し、他人とは違う能力を育み、それを武器にいつでも頼れる多様な人脈を持ち、周りと違うことを恐れず行動していくということだ。

これは口で言うほど簡単ではない。  

 

 

雇用のグローバル化にワクワクできるか

グラットン氏の提案が絶対的に正しいかどうかはわからないが、個人的には非常に共感できるし、難しくても実行に移す努力はすべきだと思う

 

しかし、まだまだ「就社」信奉の根強い日本社会には馴染みにくい考え方かもしれない。

ジェネラリストを量産する日本企業で差別化できる能力を育むのは簡単じゃないし、長時間労働が常習化した会社に勤めながら社外に多様な人脈を築くのは相当な努力が必要だ。

小さい頃から、周りに合わせていればそれなりの人生が送れると教えられてきて、今更自分で深く考え行動せよとは無茶な提案だ。  

 

それでも、グラットン氏の提案を「勝ち組の理論だ」とか、「現実味がない」とか否定するのは賢明でないと思う。

なぜなら冒頭で話したグローバル化は現実にすでに起きており、優秀な外国人材がどんどん流入しているからだ。

彼らと平等な労働者マーケットで戦うには、今の内から何らかの打ち手を実行すべきだ。  

 

今や身近な場所から雇用のグローバル化を感じることができるようになった。目に見える形で、確実に働き方の変化が起きている。

いよいよ世界はフラット化し、日本にいながら外国の方と同じ土俵で働ける。なんてワクワクする時代が訪れたのか。

 

そんなことを妄想しながら新宿で一人、天丼を頬張った。  

 

 

 

 

−筆者−

大島里絵(Rie Oshima):経営コンサルティング会社へ新卒で入社。その後シンガポールに渡星し、現地で採用業務に携わる。日本人の海外就職斡旋や、アジアの若者の日本就職支援に携わったのち独立。現在は「日本と世界の若者をつなげる」ことを目標に、フリーランスとして活動中。