丹羽宇一郎氏が、日経新聞での紙面上で、「ブラック企業」をバッサリと斬っている。しかも、ほとんどユニクロを名指しで。
”「ブラック企業」と一部で批判された企業の経営者が、「賃金が二極化するのはやむを得ない」などと反論しているのが目を引きました。賃金の中間層が減り、高賃金と低賃金に二極化するだろう、というのです。その「低賃金」とは、とても社員が家族を抱えて安定的な生活ができる水準ではない。
熾烈なグローバル競争をどう戦い抜くかを考え、批判も承知のうえでの発言なのでしょう。ただ、こうした発言を聞いていると、「企業の社会的責任」の考え方がここまで変わってきたのかと驚きました。”
口調は穏やかだが、内心は相当怒っているのだろう。
”経営者は考え直してほしい。企業の社会的責任のひとつで大事なものは雇用の確保であり、社員が安心して働ける環境を提供することです。労働力を使い捨てにせず、労働力を再生産することが、持続的な成長につながるはずです。”
おそらく、対立の根本は「国」に対する考え方だろう。グローバル企業は祖国を持たない、そして、そこには企業の利益を損なうお荷物である「出来の悪い国民」はいないのである。
丹羽宇一郎氏は、「祖国」に対する義理立てをしろと言っているのだ。
私は、企業が世界中で商売をする、ということに対しては喜ばしいことだと思うが、「祖国を持たない」ということに対しては丹羽宇一郎氏と同じく、疑問を抱く。
企業が安全に商売できるのは、誰のおかげなのか。
企業の商品を消費者が購入できるのは、誰の努力によるものなのか。
国民のモラルが高い日本で商売させてもらえることにたいして、「税金を払っているから文句を言うな」は通用しないだろう。
グローバル企業はいいとこ取りをしている。「安全」や「出来のいい国民」はタダではない。最も高く付くものだ。
極端な話、「祖国」を持たない企業に対して、その国での安全を保証する必要は無い。
そうすれば、グローバル企業は「自警団」を持たざるをえない。そのようになった時、自分たちがいかに国に甘えていたかが、わかるだろう。