電車の中で、周りを見渡すと、ゲームをやっている人は実に多い。スマートフォン上で動くゲームで最大ヒットとなったパズルアンドドラゴンズは、日本だけでも2000万ダウンロードに迫る勢いだ。
2000万ダウンロードといえば大した数字である。日本でのスマートフォンの普及台数が4000万台程度であるから、およそ2台に1台のスマートフォンにこのアプリケーションが入っていることになる。
なぜゲームはこのように魅力的なのだろうか。人間のモチベーション研究の第一人者である、M・チクセントミハイによればそれは、
”仕事が「最適体験」を創りだすように出来ていないから”
であるという。
「最適体験」とは、「フロー」と呼ばれる心理状態を創りだすための体験であり、それは
①達成できる見通しのある課題に取り組んでいる
②自分のしていることに集中できている
③集中できる条件は、作業に明確な目標がある
④集中できる条件は、直接のフィードバックがある
といったような条件から生み出される。
すなわち、仕事がつまらなく、ゲームが面白いのは、仕事が社員向けには最適体験ができるように考えぬかれていないからである。
ゲームは顧客たるユーザーに最適体験をさせるよう注意をはらって作っているが、経営者は従業員と顧客の両方に力を割かず、顧客のみに注意を払っている。従業員満足の中心にフロー体験を組み込むことは、結局は顧客のためになるにもかかわらずである。
「知識労働者」を自社に引きつけたいのであれば、最適体験を生むべく、従業員に向けて「仕事をマーケティングする」ことが必要となる。