通常であれば、目の悪くない人にメガネは不要だ。日本の人口の約半数がメガネを使用しているとする統計もあるが、半分はメガネと縁のない生活をする。
そんな中、普段メガネを掛けない人にも爆発的に売れた商品がある。
「JINS PC」という、PCやスマートフォンから出る「ブルーライト」と呼ばれる短波長の可視光をカットするというメガネだ。
「ブルーライト」は目に悪い、という触れ込みで販促をかけ、現在では300万本を売り上げたということだ。
他社もこれに追随するように、同種の商品を出してきている。
しかし、ブルーライトが本当に眼に悪いという医学的な証拠はまだない。「睡眠のサイクルを妨げる」などの研究はあるが、ブルーライトを長時間浴びた時に目がどうなるのか、という証拠はまだまだデータが少なく、確定的なことは言えない。
しかし、ここで肝心なのは「ブルーライトがほんとうに目に悪いのかどうか」ということよりも、それを信じてメガネを購入した人が数百万人もいたということだ。しかも、普段メガネを掛けない人までも。
これこそ、無消費層をとりこんで消費させるというお手本のようなマーケティングだ。
なぜ、確定的な証拠もなく、ブルーライトは眼に悪いから、ということを信じて多くの人がメガネを買ったのだろう。
未開拓市場を開拓するために、彼らは何をしたのだろう。考えられることは
1.安い
度付きのレンズを入れなければ、JINSPCは4000円程度で買える。4000円であれば、あまり躊躇せずに「試してみようか」と思わせる価格だ。普段コンタクトレンズを浸かっている人も、そのまま上からメガネをかけることができる。
2.人々の不安に訴える
「パソコンを見るようになってから、視力が落ちた」と思っている人(実際そうなっているかどうかは別の話として)は多い。そういった不安にダイレクトに答える商品であった。
3.直ぐに手に入る
フレーム・レンズなどをパッケージ化して、そのまま利用できる。「試してみようか」に反応が早い。
4.話題性が高い
無消費層に対する商品は、話題性が高い。メガネを継続して使っていた人よりも、メガネを新しく使い出した人のほうが話題を持ち出す可能性が高い。
5.売り出し当初、ターゲットをIT企業に務めているエンジニア層に絞った
ターゲットを当初エンジニアに絞り、感想を得た上で、SNSなどを使い話題を拡散した。元々通販に強い自社サイトとの相乗効果が出た。
もちろんこれらの話は「後付け」かも知れないが、「いままでその商品を使っていなかった人」をターゲットとする商売には非常に参考となる事例だろう。