友人から、「デザイン」と「アート」のちがいは何か?と問われた。私は答えることができなかった。
そしてデザインとアートのちがいについてその友人から学ぶことができたので、備忘録のためにここに記することにする。
「デザイン」と「アート」は同列に語られることが多いが、似て非なるものである。むしろ全く逆であると言ってよい。「デザインの良いもの」を求める人が増えたため、最近ではデザイナーの需要が増していると聞く。が、彼らはアーティストではない。
「アート」は芸術と訳されるが、その本質は芸術家の「自己」表現である。目的はアーティスト自身の世界を何かしらに投影すること。
したがって、アートは鑑賞する人間が1人も存在しなかったとしても、アートとして存在しうる。また、仮に鑑賞する人間が存在したとしても、そこから受け取るものは一人ひとり異なる。
だから、アーティストによる作品は本質的に「商品」ではない。商品は「他者のため」に作られたものだからだ。アートは他者のために作られたものではない。
もし値を付ける人がいたとしても、アートの価値はその価格とは無関係に存在する。
さて、「デザイン」はどうだろう、デザインの本質は、「他者に何かを伝えること」にある。伝えたいことがないデザインは、デザインとは呼ばない。
したがってアートとは異なり、それを見る人間がいなければ、デザインは存在し得ない。
また、デザインは「伝える」ということが本質である以上、そこから受け取るものがひとによって異なってはいけない。デザイナーが意図することが正確に伝われば伝わるほど、それは良いデザインである。
だから、デザインは「商品」と相性が良い。商品もデザインも、それを受け取る誰かの為に作られたものだからだ。
それ故、突き詰めると、デザインは「伝えたいことと無関係なものを一切省く」という作業に行き着く。例えば下の画像を見て欲しい。
これは「ジョブセンス」というサイトの日本地図だ。どの地域の求人を探すか、クリックできるようになっているが、この日本地図はあまりよいデザインとはいえない。
なぜなら、日本はもっと簡略化できるからだ。デザイナーが書くと、日本列島はこうなる。
単純に地域だけを表すならば、入江や島、半島などの表現は不要なのだ。だからデザイナーはそれを削る。
「シンプルに、必要なことだけを表現とする」のは、デザイナーの仕事なのだ。
(画像:Frank Lloyd Wright Wikipedia)