2010年当時は求人倍率が1.0倍程度だったが、現在は2.5倍だ。(DODA)
したがって、企業側からすれば技術者は「来てくれるだけでありがたい」のが現状なのかもしれない。
が、現実はもう少し厳しい。多くのソフトウェア企業では「思ったよりもスキルが低くて後悔した」であったり、「言っていたことと違う」など、
現場と技術者のスキルのアンマッチも多く見られる。
なぜこのようなことが起こるのだろうか。
これに対して、米国ソフトウェア工学者の第一人者である、トム・デマルコは、次のような話を紹介している。
”サーカスの団長: 何年ぐらいお手玉をやっているの?
応募者:6年位です。
団長 ボールをいくつ扱える?3つ?4つ?それとも5つ?
応募者:いくつでも出来ますよ。
団長:火がついているものはどうかね?
応募者:できますとも。
団長:ナイフや斧や開いた葉巻箱やヒラヒラ帽子はどうだね?
応募者:みんなできますよ。
団長:一緒にやるおしゃべりは得意かい?
応募者:そりゃもう愉快にやりますよ。
団長:うん、良さそうだな。うちでやってもらうことにしよう。
応募者:あれ?…私のすごい芸、見ないんですか?
団長:ヘェー、それは考えつかなかったな。
やらせもしないで曲芸師を雇おうとするのば馬鹿げている。そんなことは常識だ。だが、技術者、設計者、プログラマー、グループリーダーなどを採用しようとするときは、この常識があまり通らない。
管理者は、設計結果やプログラムなどを見たいとは言わない。現実には、面接は単なるおしゃべりに終わっている。
管理者は、以前に作ったものと同じ程度のものを作れると仮定して、良い製品を作る者を雇いたいと思っている。したがって、管理者が応募者の仕事の質を推定するためには、生産物のサンプルを調べる必要がある。”
これはよく考えなくても当たり前のことだ。その人の仕事の出来不出来を調べるには、面接で何を言ったかよりも、「実際に何を作ったのか」を見たほうがはるかに良い判断ができる。
考えてみれば、新卒採用でも全く同じことが言える。面接でくだらないお喋りをするよりも、卒論や修論を見せてもらう、それを説明してもらうほうが遥かにその人の能力を測りやすい。
「ほんとうに良い人」を採用したいのであれば、表面的な面接のテクニックに関して云々言うより、きちんとその人の「成果物」を精査する方が、はるかに良いのは間違いない。