ベネッセの事件もあり、「個人情報」に関して多くの人が過敏になっている時、ちょうど総務省から発表された「位置情報プライバシーレポート」が話題になっている。
特に批判を浴びているのはヤフーだ。
ヤフーの意見書がクズ過ぎると話題に(総務省位置情報取扱い検討会のパブリックコメントで)(togetter)
ヤフージャパン、総務省にパブコメを出すも激しく全否定されネットでも十字砲火を浴び炎上(Yahooニュース)
討論の中心は「スマートフォンのGPSなどで取得できる位置情報」に関して、どのように取り扱いをすべきか、となっている。
”パーソナルデータとしての利活用が期待されている電気通信事業者が取り扱う位置情報について、通信の秘密や個人情報、プライバシーを適切に保護しつつ、ビジネス利用も含めたその社会的利活用を促進するため、位置情報の取得、利用及び第三者提供時における適切な取扱いについて検討を行いました。”
ヤフーや通信キャリアからすれば、利用者の現在位置を第三者に提供できれば大きな商売になる。
例えば、「ある場所に近づくと、スマートフォンの画面に広告が表示される」であったり、「この場所に来たらポイントを加算する」など、様々な用途が考えられる。
総務省のレポートを見ると、概ね「法律事務所」は、位置情報を簡単に商売に利用できるようにすべきでない、と言っているのに対し、「新経済連盟」(メンバー企業はこちら)と、ヤフーは明らかに「もっと個人情報を自由に使えるようにせよ」と言っている。
さて、この議論だが、何が焦点となっているのだろうか。
個人情報保護法を簡単に解説しながら、ポイントを挙げてみたい。
まず「個人情報」の対象範囲だ。
1.「個人情報」は、個人に関する情報であって、個人を識別できる情報のことを言う。
そして、個人情報を使っている事業者は、個人情報を集めるときに次のことをしなければいけない。
2.利用目的を特定して集める。この利用目的は後から勝手に変更してはいけない。変更する場合は個人に通知するか、公表する。
また、個人情報を持っている時には、情報にセキュリティをかける必要がある。
3.個人情報には、安全対策を施さなくてはいけない。
そして、肝心な部分だ。
4.個人情報は、本人の同意なく、第三者に提供してはいけない。ただし、名簿業者などが予め本人にその内容を通知しているときはOK。また、委託先は第三者に該当しない。
他にも色々な定めがあるが、重要なのは以上の4点だけだ。
こういった点について、総務省とヤフーの意見はかなり異なる。
例えば、第三者提供の同意について、総務省は「個別のサービスごとに同意をとりなおせ」というが、ヤフーは「ヤフーのサービスを利用するときは、第三者への提供に同意したとみなします」と言った形の包括同意にしたいと思っているようである。
あるいは、「利用者が一回同意した規約でも、利用者は自由に撤回できる」というのが総務省の意見だが、ヤフーは、「そのルールは削除してくれ」という。
最後にはヤフーが、「このレポートは法律に反映しないでくれ」と言っているが、総務省は「これを法律に反映するつもりだ」と、物別れに終わる。
また、新経済連盟も「利用目的」の範囲を拡大しようと必死である。
”「コンテキストから予測できる取得・利用の範囲は、利用者が位置情報と共に必要とする情報が様々であることから、柔軟に捉えられるべきである。
例えば、地図ナビゲーションサービスであれば、取得した位置情報について、地図上に位置を表示する機能に用いること以外にも、周辺の店舗や交通手段などの情報を提供することで利用者の便益に資する。
したがって、こうした周辺情報の提供も、コンテキストの範囲内であると考えられる。」”
利用目的を絞り込めば絞り込むほど、再度利用目的の通知や公表が面倒になるからなのだろう。
考えていることもわからなくはないが、総務省は「個別にやれ」と一蹴。どうやら意見が異なるようだ。
自分の行動が、第三者に自由に提供されるのはあまりいい気持ちではない。が、便利になるという側面もある。
当分この争いに決着がつくことはなさそうだ。
追記:ヤフーの考え方
「日本がビッグデータ後進国になってもいいのか」ヤフーが警鐘を鳴らす理由(ハフィントン・ポスト)