428781f4f4bd212233c681644a49c6a6_s採用活動に関わっていると、様々な質問をする学生に出会う。

中でも多いのが、「大企業に就職したほうがいいですか?それとも、スタートアップや中小企業の方がいいでしょうか?」という質問だ。

 

大手志向が強まっているとはいえ、「大手でなければ絶対にイヤだ」という学生は少数派で、現実的な学生も多い。

したがって、「大手では書類選考で落ちてしまう学生」や、「なかなか内定が取れない学生」は特に、「大手にこだわるべきか、柔軟に就職を考えるべきか」で悩むのである。

 

さて、「大企業に入るのは狭き門」と思われているが、案外そうでもない。

中小企業白書によれば、全就労者数のうち、大企業で働く人の割合は37.3%、中小企業で働く人の割合は62.7%だ。したがって、3人に1人は、大企業で働いているという計算になる。

もっとも、中小企業白書の定義では、中小企業が300人以下の企業、となっているため、学生の想像する「大企業」とは隔たりがあるかも知れない。

例えば、大企業の定義を「上場企業」とすれば、就労者数の合計は約630万人だから、全就労者数の約3900万人に対する割合は約16%となり、大企業で働く人の割合は6人に1人ということになる。

上位16%は、偏差値で言えば60以上ということだから、「そこそこできる人」なら、大企業に入れるというわけだ。

 

余談だが、中には極端な事をいう学生もいて、「平均年収が1000万円を超える会社」を大手と呼ぶ、という人もいた。(!)すると日本に大手は50社程度しか無く、上場企業の平均従業員数が2500人程度であるから、大手に勤める人は12万5千人。全就労者数の0.3%、東大生の割合と同じくらいである。

これは確かに狭き門だが、総務省の就業構造基本調査によれば、年収1000万超の人は日本全体の就労者のうち3.5%程度。お金がほしいならば、無理に平均年収1000万の会社に入ることを狙う必要はない。他にも稼ぐ道はたくさんある。

 

 

話を元に戻そう。「大手か?中小か?」と悩む学生に、どう答えてあげるべきなのか。

特に正解があるわけではないが、私はある大学の就職課の方が、こうアドバイスをしていたことを思い出す。

 

就職課 「なぜ、そんなことを悩むんですか?」

学生 「中小企業に内定をもらったのですが、大手にこだわって就職活動を続けるべきかどうか迷っているからです。」

就職課 「なるほど。内定をもらった会社には行きたくないんですね。」

学生 「そういうわけではないんですが…なんとなく不安なんです。大手のほうが安定しているって言うし。でも、1週間以内に内定の承諾をしなくてはいけないし、このまま就職活動を続けても大手から内定をもらえるとは限らなくて…困っています。」

就職課 「あなた、大学はどうやって決めたの?」

学生 「なんとなく、成績を見て受かりそうなところを受験しただけです」

就職課 「この大学でよかったと思う?」

学生 「他の大学を知らないので、なんとも言えないですが、楽しかったとは思います。」

就職課 「みんな同じ答えだね。」

学生 「そうなんですか?」

就職課 「そうだよ。大学もそうだけど、就職も同じ。入ってみたら、みんなそれなりに「幸せ」って思うんだよ。一部の人を除いて。」

学生 「一部の人?」

就職課 「一部の人というのは、強烈な目的意識のある人たちのこと。ゲームを作りたい、とか、年収1000万以上の会社が良い、とか、なんでもいいので目的がある人たちのこと。この人達は妥協できなくて就職活動に失敗することもある。でも、たいがいは頑張ったかいあってうまく行っているけどね。」

学生 「…」

 

 

就職課 「あなたは、目的があるの?」

学生 「…あまり考えてませんでした。とりあえずIT業界をまわる、っていうことくらいでした。やりたい仕事の内容もあまり決めてません。」

就職課 「今のままなら、中小企業に行ってもそれなりに幸せだと思いますよ。でも、不安は消えないですよ。失敗も、成功も、目的があって初めて分かること。でも、あなたには失敗も成功もない。状況に流されているだけ。だから不安なんですよ。」

学生 「…なるほど、そうかもしれないですね。」

就職課 「目的があるなら、どの企業に行ったら良いか、ということは言えるけど、今のままではそれも言えない。もう大人なんだから、目的を決めなくちゃいけないんだよ。人に言われてするのではなく、自分で決めなきゃ。一生このままだよ。」

学生 「…」

 

大人なら、自分で決めなきゃいけない。という言葉が、記憶に残った。

 

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