a0002_007767「社員を甘やかしちゃダメです。」と、その経営者は言った。

その方の経営する会社はここ数年、売上が20%ずつ伸び、創業以来、最高益を更新し続けていた。

「うちの社員は、皆高い目標を持ち、それに向かって努力しています。」

と、社長は自慢げに言う。

たしかに、会社は急成長を遂げ、ビルのフロアも急拡大、毎月のように新しい社員が入ってくる。オフィスは活気にあふれていた。

社長は鼻高々で語り続ける。

 

 

「すごいですね」と、私は言った。紛れも無く、やり手の経営者だ。

「そうでしょう、安達さん。ウチでは高い目標に取り組めば、年収1000万でも、2000千万でも、それに見合った責任と、給料を与えます。」と。社長。

私は聞いた。「なるほど。でも、低めの目標の時は、どうなるんですか?」

「低めの目標の時は、給料を下げます。当たり前です。ウチで働く社員は皆プロという自覚を持ってもらっています。スポーツと同じです。チームの勝利に貢献した人には高く報いる。貢献の低い人はそれなりに、という訳です。まあ、低めの目標を掲げる人は殆どいませんが。」

「そうなんですか?」

「ええ、皆プライドがあるんでしょうね。同期でも年収で500万以上差がついているケースもありますから。」

「へえ、それはすごいですね。」

なるほど、たしかにありそうな話だ。しかし、疑問もある。

「社長、高い目標を達成できなかった時はどうなるんですか?」

社長は言う。「安達さんはどう思います?」

私は「やっぱり、給料を下げるんですかね…?」

社長は言った。

だって、格差がないと、やる気がでないでしょう?うちは最低でも年収400万は保証してます。それで生活に困ることはない。でも、上を見て頑張って欲しいですよ。

 

 

私は考えた。

「給料が下がって、辞めてしまう人もいるのでは?」

社長はフフッと笑って言った。

安達さん、それで辞める奴は、うちには要らないですよ。

「勝ち組と、負け組がハッキリしても?」

「もちろんです。給料が人と比べて多いか少ないか。世間と比べて多いか少ないか。みんな気にしてます。ウチは頑張った分だけもらえる。それでいいじゃありませんか。」

社長は続ける。

「国の中での経済格差は問題かもしれません。生まれも才能も違うから、当然でしょう。でもね、会社においてはスタートラインは同じですよ。会社の中の格差は実力格差。機会は均等に与えられている。頑張らないのは、本人の責任ですよ。」

 

 

 

私は、数年後にその会社に再び訪問した。売上の伸びは年間5%程度になり、かつての勢いはない。また、利益は残念ながら伸びていないようだ。

そして、その社長は、「今、悩みを抱えている」と仰っていた。私は、お話を伺った。

 

「ご無沙汰しています。社長、今日はどのようなお話ですか?」

「成果主義を見直すべきかどうか、考えています。」

「どういう状況なのですか?」

「最近、目標を達成できない人があまりにも増えてしまって、皆最初から目標を高く設定しなくなってしまったのです。「年収400万でも十分」という人も出てきました。」

なるほど…と思い、私は社長をじっと見た。

社長は続ける。「最近は目標が低くなったせいで、売上が伸びなくなりました。利益も上がっていません。高い目標をもたせても、皆あきらめ気味です。

私は、ひとつの疑問を社長に投げた。

「なぜ、みんな目標を達成できなくなったのでしょう?」

社長は言った。「そうですね、最近コンペで勝てなくなってきたからかもしれません。もう少し皆のプレゼンのスキルをあげなくてはいけないですかね。」

 

 

どうして皆がやる気を失っているのか、という理由には様々な解釈があるだろう。

しかし、格差がやる気を出す、というのは正しい時もあるが、そうでない時もまた存在する。国も、会社も同じなのだ。

 

 

 

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