「仕事なんて、楽しくなきゃダメでしょ」と、彼は言った。
彼は、就職人気企業ランキングのトップ100に入るような有名企業に入ったが、そこを2年経たずに辞め、2社目には外資系のスタートアップ企業、そこで3年を経て3社目に機械製造の中堅企業に入社した。そして2年を経て、現在は再びスタートアップ企業に入り、そこで頑張っていた。
私は、「なぜ転職を繰り返すのですか?」と聞くと、彼は「楽しくない仕事を続けたくなかったから」と答えた。
彼は言った。
「面白くなくなったら、迷わず仕事を辞めるよ。」
私は、彼の話を聞き、思わず言った。
「でも、つまらない仕事でも、続ければ面白くなるかもしれない」
「本当にそう思うかい?」
「…。」
「楽しくない仕事を続けてはいけないんだ。」
「なぜ?」
「ひとつは、人生を無駄にしたくない、ということ。人生はこんなに短いのに、それをつまらないルーチンワークで埋めるほど不幸なことはない。」
「あとは?」
「2つめは、つまらない仕事をやっていても、成長は見込めない、ということ。よく「我慢しろ」という大人がいるけど、ボクは信じない。つまらない仕事を10年続けたら、つまらない人間が一人出来上がるだけだ。」
「ふーむ。」
「3つ目は、つまらない仕事は、給料が安い。もっと自分を高く買ってくれる仕事につきたいのは、あたりまえだ。」
彼はそうまくしたてた。
私は、意地悪なひとつの質問をした。
「…いまは、面白くて、成長できて、給料の高い仕事につけた?」
「うーん、正直に言うと…。」
「いうと?」
「最近、そんな仕事はないんじゃないかと、思うようになった。」
「…。」
「結局、「人の下で働く」ってのは、面白くもない仕事をして、成長を諦めて、給料の低い仕事で頑張るってことだったよ。」
「ずいぶんと極端だな。」
「だから、もうボクは、サラリーマンを辞めようとおもってる。」
「どうするの?」
「会社を作る」
「本気?」
「もちろん。」
そして、彼は本当に会社を作ってしまった。今までやってきたことを全て捨てて。
私はしばらく経ってから彼に会いに行った。
「調子はどう?」
「ぼちぼちだよ。」
「望んでいたものは手に入ったかい?」
「毎日、顧客のために地味なルーチンワークばかり。成長している実感もない。給料だって、前のほうがずっと良かった。」
「そうか…。悪いこと聞いたね。」
「でも、毎日めちゃ楽しい。それは間違いない。」
「…。」
「多分ボクは、「仕事をやらされている」っていう事に、嫌気が差していたんだよ。」
「今は?」
「全部、自分で望んだこととして、うけとめなくちゃならない。でも、そうして初めて、仕事が楽しくなった。」
「良かったじゃないか。」
「でもね…。」
「でも?」
「最初から、あの新卒として最初に就職した時から、そう思えていたら、人生は違ったものになったかもしれない、と思う時はある。」
私は、なぜ仕事を楽しいと思う人と、思えない人がいるのか、ずっと不思議だった。
同じことをしていても楽しめる人、楽しめない人がいるからだ。
でも、彼の話を聞いて感じた。
「やらされているのではなく、自分で今の状況を選択した」
と思える人が、仕事を楽しめるのだ。
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