東芝の不正会計について、会計監査を担当した新日本監査法人が、金融庁から処分をくだされ、存亡の危機だという記事を見た。
東芝の粉飾を見逃した「新日本監査法人」が存亡の危機(現代ビジネス)
新日本監査法人は、巨額の利益水増しで決算訂正に追い込まれた東芝に「適正意見」を付け続けていたにもかかわらず、自ら何らけじめをつけようとしなかった。これに業を煮やした金融庁の「公認会計士・監査審査会」が今週火曜日(12月15日)、公認会計士法に基づく行政処分を行うよう同庁長官に勧告したのだ。
勧告を受けて、金融庁は来週(12月22日)にも、業務改善命令だけでなく、業務停止や課徴金支払いを含む厳しい処分を下す公算が高まっている。その一方で、経済界ではクライアントの「新日本離れ」が取り沙汰されており、またしても日本を大手監査法人が消滅しかねない事態に陥っている。
この記事の真偽はともかく、「また粉飾か」と呆れている方も多いと思うが、この手の事件は全く再発防止できていない。数年前のオリンパスの事件がまだ記憶に新しい。
オリンパス粉飾をめぐり、新旧監査法人が泥仕合(東洋経済オンライン)
「粉飾がこれだけ巨額の金額、長期間にわたる以上、監査法人は共謀か無能を疑われても仕方ない」。民主党がオリンパス問題で立ち上げた「資本主義・企業統治改革ワーキンググループ」の座長を務める大久保勉政調副会長は責任を厳しく追及する。
風当たりが強いのはあずさだ。同法人は09年6月まで35年にわたりオリンパスの監査を担当。1990年代から続いてきた損失飛ばしも、また国内のベンチャー3社を732億円もの巨額で買収した不適切な取引も、同法人の担当期間内に行われてきた。
ただ実際には、監査法人への批判も多数見かけるが、彼らもやるべきことはやっている。
例えば親戚に監査企業の株を持っている人間がいないかどうか、役員はいないかどうか、監査先企業の口座を持っていないかどうか、そういったことに関して毎年毎年入念なチェックが行われたり、クレジットカードの利用履歴を調査されるなど、実際に抜き打ち検査が行われたりする。
また、会計士は真面目な方が多く、現在の監査法人は「不正」を許容する文化ではない。
だから、これほど粉飾決算が繰り返されているのは、もはや「企業体質」や「意識」の問題ではない。仕組みの問題だと考える。
つまり、監査を担当しているのが、一民間企業であり、監査の対象企業から報酬を受け取っており、利益を出さなくてはならないという、いびつな状態そのものに問題がある。
もちろん、監査法人もそれを認識していないわけではない。監査法人の中では監査先企業との独立性を保つため、言葉遣いにも気を遣っている。
「営業」とは言わない。PDという。
「顧客」とは言わない。クライアントという。
など、細かに気を配る。
だが、「監査報酬」を受け取っているという事実は変わらない。
例えば、大手監査法人であるトーマツの業務収入はこのページで確認できるが、監査証明業務(会計監査)と非監査証明業務(コンサルティング等)の収入の比率を比べると、会計監査がコンサルティング等の三倍となっている。
不正を指摘することで、大きな売上を失いかねない監査法人が、どこまで厳しく監査をできるのか、要するに「できない」ので、粉飾はなくならないのだ。
また、監査法人は検察や警察のように捜査権を持たない。会社が内部で何を行っているのかを知ることには限界がある。
なぜ「粉飾決算」はなくならないのか(プレジデントオンライン)
不正会計を外から止めることはできない。東芝のケースをみても、社外取締役や監査法人は抑止力として機能しなかった。談合や贈収賄、脱税には厳しい罰則もあるが、「やるときはやる」というのが実態だろう。罰則や損害賠償がさらに厳しい海外でも、不正会計はなくなっていない。不正会計を止めることができるのは、経営者の自制心しかない。
結局のところ、仕組みを変えなければ、粉飾はなくならない。私の知るある方は、「監査で巧妙な不正は見抜けないし、見抜けてもよほどのことでなければ指摘できない」と苦々しく言った。
結局、監査法人を金融庁の下部組織としてしまい、証券取引所に供託金などを納めて、そこから監査報酬を捻出する形とする。
あるいは場合によっては強制捜査権を与えるなど、仕組みを変えなければ、いくら責任を追求しても、粉飾は再発する。
「粉飾が起きる前提の制度だから別に気にしなくて良い」というのが、多くの関係者の本音なのかもしれないが、その場合、リスクを取らされるのは、情報量の少ない個人投資家だろう。
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