面接をしていた。相手の経歴を見ると、2~3年で職を転々とし、現在32歳ですでに在籍4社目だ。
多くの会社で働き、経験も豊富なのだが、こういう経歴の持ち主を「敬遠」する会社は多い。
実際、その人に「転職活動をしてきた中で、転職回数について聞かれたことがあるか?」聞いてみると、「はっきりとは言われないが、やはり転職回数が多いと歓迎されない会社もありました」という。
リクナビでも転職回数についての記事が散見される。
記事によれば30代ならば3回以上の転職経験があると約半数の企業が「気にする」と回答している。コールセンター大手の「もしもしホットライン」の人事はこの中で
”あまりにも転職回数が多い方は、定着率を重んじる当社としてはマイナス。30歳で3回以上転職されている方の採用は厳しいことが多いです。”
と言っている。
試しにシミュレーションしてみよう。
大学を卒業し、22歳で就職。3年ほど勤めたが、就活に失敗。ノルマの厳しい営業職にしぶしぶなったが、「やりがいのない仕事」と「上司との軋轢」に耐えかねて25歳で最初の転職。
次は食品会社に移ったが、これが失敗、とんでもないブラック企業で残業代も出ず、体を壊して27歳で転職。
次の会社は「安定を求めて」小さなオフィス家具の商社で働いていたが、業績が悪く、30歳になっても年収が400万以下。これでは結婚できない…、と思って次の転職先を探す。
なんとか知り合いの会社に潜り込んだが、残念ながら業績の悪化によりリストラ対象となってしまい、転職を余儀なくされる…。
そういうことを色々と考えながら、面接の相手を再度見る。32歳ですでに転職3回は確かに多い。他の応募者を見ると29歳、転職回数は初めて。7年間一つの会社に勤めている。
やはり、後者のほうが魅力的だと考える人は多いだろう。
なぜだろう、なぜ後者のほうが魅力的だと感じる人が多いのだろう。
前者と後者を比べた時、「後者のほうが能力が高い」とする根拠は何一つ無い。おそらく「能力」とは関係がない。
後者のほうが「定着してくれそう」なのだろうか?いや、今まで転職しなかったからといって、これからも転職しないという思い込みに根拠はない。
そんなことを考えていると、突如として頭に浮かんだ。
日本人は「生え抜き」が好きなのだ。
リクルートワークスの研究によれば、「中途採用が出世できない」という傾向は、世界各国の中でも日本に特有の現象だそうだ。
ある日ヘッドハンティングされた人が突然自分の上司になったら、多くの会社では反発は必至である。
これらをつなぎ合わせると、次のことが見えてくる。
解雇規制が強い日本の会社は、中途採用には慎重である。そして、年功序列的な考え方、すなわち永年会社に貢献した人が出世する、という構図になっている。
したがって、支配的な価値観は、「長く勤める人=価値が高い」である。
だが、本当にそうだろうか?
「転職の回数が少ない人」は、そうでない人に比べて価値が高いのだろうか。私はそうは思わない。
転職回数が多い人は、より多くの会社を見て知っているということであるし、「飽きっぽい」のは必ずしも悪いことではないからだ。また、「10年以上同じ会社に勤めている」からといって、仕事ができるとは限らない。
当たり前すぎる話だが、表面的なスペックよりも、実際に話して、仕事をしてみないとその人のことはわからない。
そういう意味で、「面接」や「履歴書」に変わるなにかよい判断基準があるといいのに、と思った次第である。
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