少し前だが、食べログについて飲食店の経営者がこのような記事を書いていた。
”食べログを運営している方に、バーのマスターから2つ提案です”
食べログは便利なツールであるが、いわれのない誹謗中傷などに悩んでいる、という内容だ。
”たまにお客様から「食べログって影響あるんですか?」と質問されます。
お答えします。食べログの影響はすごくあります。今、日本の飲食業界で一番大きい影響力のあるメディアはテレビよりも雑誌よりも食べログだと言っても過言ではないと思います。(中略)
だからこそそれを逆手にとって、操作してお金をとる悪質業者も出てくるし、同業者があえて人気店に悪口を書いたりするんです。
僕ら飲食店の人間は「ちょっとでも悪いイメージ」を持たれないように日々、努力しています。
トイレの臭いや、季節を感じるお花、「ちょっとでも安く感じてもらおう」と日々「値付け」に悩んだり、商談をしているお客様なら静かな席にお通ししたり、タバコの苦手な方は風上に座っていただいたり。
それが「ちょっとした思いつきの感情」で悪口を書かれてしまうと本当にそのお店の人間は落ち込んでしまうし、明らかな営業妨害になる時もあります。”
そして、彼は食べログに対してこう提案する。
”そこで食べログを運営している方に是非、提案をしたいのですが、例えばフェイスブックのアカウントからでないと投稿は出来ないというのはどうでしょうか?”
要するに、「実名」でなければカキコミをできないようにしてくれ、ということだ。さらに、「お店の掲載そのもの」についても問題が起きている。
”「秘密の隠れ家」食べログ掲載で台無し バー経営会社、削除求め提訴”
グルメ情報サイト「食べログ」に「秘密の隠れ家」という営業方針に反して掲載され、削除の要請に応じなかったのは不当として、大阪市の飲食店経営会社がサイト運営会社「カカクコム」(東京)を相手取り、サイトからの削除と330万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴したことが19日、分かった。同日開かれた第1回口頭弁論で、カカクコム側は請求棄却を求めて争う姿勢を示した。”
現在は「掲載されたくないので削除してくれ」という要望にも食べログは応じていない。評価の低い店からすべて掲載を拒否されたらサイトの運営方針そのものが根幹から揺らぐからだろう。
「良い情報だけ掲載されたいお店側」と、「悪い情報も欲しい消費者側」そして、「発言の場を運営している食べログ」の3者がせめぎあっている状態だ。
さて、この問題をどう捉えればいいのか。「匿名の批判」について以前書いたが、この問題の根っこは「言論の自由」ではない。言論の自由は守られて当然だ。しかし、言論の自由は、「何を言っても良い」ということではない。「他者の人権を侵害しない範囲において」自由であるということである。
したがって、ここで議論すべきは「発言の場のルールがいたずらに言論の自由の濫用を助長することを防ぎ、他者への人権侵害を抑制する仕組みとなっているかどうか」である。
すなわち、「食べログ運営は、誹謗中傷が書き込まれることを防ぐ努力を最大限にしなければならない」ということだ。
すでに食べログを「信用」している人は多い。すくなくとも2ちゃんねるのように「便所の落書き」扱いはされていない。しかし、食べログを信用している人が多い以上、発言にはルールが必要だ。さもなくば「食べログ」は社会的責任を果たしていないことになる。
そのように考えれば「実名でなければ発言させない」は非常に良い案だと思う。これは政治活動ではないのだ。「顧客」の名を借りたお店いじめはやめさせたほうが良い。