ローマ人の物語 (1) ローマは一日にして成らず「グローバル化」という言葉を聞く頻度が増えた。ユニクロもグローバル化ゲームもグローバル化大学もグローバル化、みんなグローバル化を標榜している。そんな時、決まって言われることが、「グローバル化しないと生き残れない」であったり、「世界に通用する人材」だったりと、まあ判で押したような文言である。

 

しかし、どうだろう。みんな、「グローバル化」という言葉をどういう意味で使っているのだろうか。

 

はっきりいって、私には「グローバル化」の意味がよくわからない。

例えば、楽天が「グローバル化」するためにやっていること、

1.英語を公用語化する

2.日本人ではないスタッフを増やす

3.海外マーケットの開拓

・・・これがグローバル化なんですか?

 

最近、グローバル人材育成研修なるものが企業内で流行しているそうだ。こういった研修の中身は要するに

「世界中のマーケットで商売出来る人材を育成します」ということを「グローバル化」と呼んでいるらしい。

 

また、大学で教えていることもさほど変わらない。要は、「世界中の人々と一緒に働ける」「文化を理解できる」様な人が「グローバル人材」なのだそうだ。

 

へえ、そうなんだ。要するに、海外でうまく働ければ「グローバル人材」って言うことなんですかね。

海外に出て行って働けばグローバル人材?

多国籍企業で英語を使って働けばグローバル人材?

なんだそれ。働く場所が変わっただけじゃない。使う言語が変わっただけじゃない。商売する相手が変わっただじゃない。

 

そんなのがグローバル人材?

 

 

違うと思う。

私が思うグローバル化はこういうものだ。

 

今から2000年前、究極のグローバル組織がこの世に存在した。それは「古代ローマ」である。最盛期にはその領土を端から端まで移動するのに数ヶ月~1年以上かかったそうだ。

今の「グローバル」など比較にならない。今で考えれば、「月」とか「火星」が領土だったようなものだ。これくらい広大な領土になると、中央の意思も、政治も末端には殆ど届かない。自分の国の首都にすら、一生行ったことがない人もたくさんいただろう。

 

そんな領土をローマはどのように統治したのか。

ローマと、他の国家との最大のちがいは、「寛容と同化」にあった。具体的には、ローマは、征服した土地の支配階層を自分たちの支配階層である元老院議員として、どんどん組み込んでいったのだ。

これであれば征服した土地の民も安心する。また、ローマの統治に新しい考え方、新しい概念が加わり、ますますローマが活性化する。

そして、征服された土地の人々は、ローマ化、文明化されより高い生活水準を享受できる。

 

このやり方は、敵国が攻めてきた時、ローマとその属州、属国を一致団結させることに非常に大きく貢献した。

「勝ち組と負け組を作らないグローバル化」とも言える。

 

もう一つ、「カリスマの排除」がローマの特徴だ。ローマ人は極端にカリスマを嫌った。共和制を取っていた時代はもちろん、帝政に移行した後のローマも、ひとりよがりな政治、あるいは悪政を行えば即暗殺されてしまう(ローマ皇帝の殉職率は50%程だったらしい、まさに命がけだ)。

領土が広くなり、指揮命令系統の混乱を抑えるために初代皇帝アウグストゥスが「帝政ローマ」を興したが、同じ「皇帝」でも、中国の「皇帝」や後のフランスのの「王」などとは全く異なる。

これにより、「トップの間違いを正すしくみ」を機能させていた。

 

 

それを考えると、現在のグローバル企業の行なっていることは所詮「グローバル化」ではなく、「商売を海外でやりたい」ということに過ぎない。

あんた方、「勝ち組と負け組」を作りたいんでしょ?世界中で競争させたいんでしょ?能力の低い人から搾取したいんでしょ?

そんなものは、グローバル化ではない。