ビジネスはルールをうまく破る方法を知っている奴が勝つ。そう私は言われた。
もちろん、ここにおける「ルール」とは、法律や規制などの明文化されたルールではない。どちらかと言えば、「皆がルールだと思っているもの」である。
例えば米国のUberは、タクシーに変わるものとして「ライドシェア」という考え方のサービスを生み出した。すでに世界60カ国程度で提供されており、一般人が誰かをついでに運んであげる、という行為をやってしまえ、というわけだ。
ただしこれをルール違反、という人も当然いる。日本ではUberが福岡でライドシェアの実験を行っていたが、白タクに当たるのではと国交省から行政指導が入ったようだ。
また、Airbnbという「空き室を旅行者に貸し出す」というサービスが既に世界190カ国で運営されている。世界中で歓迎されているサービスではあるが、もちろん既存の宿泊施設との摩擦はある。
サンフランシスコでは既に合法化されたが、日本においても旅館業法に引っかかるのではないかという議論が絶えない。
いずれのサービスも既存の明文化されたルールに明らかに違反しているわけではなく、日本においてはまだ司法の判断はなされていない。単純に言えば、「保留」されているのだ。
彼らはいずれも、新しいルールを作ってしまったのである。
といっても、こんな大げさな話だけではない。
冒頭に挙げた「ルールをうまく破る方法を知っている奴が勝つ」と教えてくれた方は小さく、少しずつ「ショートカットする」のである。
年賀状1つにしても、「年賀状なんか送るな。どうせ埋もれるだけだ。クリスマスカードをおくれ。日本でそういう商習慣がないから、やるんだ」
といってみたり、
「ベストセラーをよむな、どうせ誰かが読んでくれている。人が読んでいないものを読んで、ベストセラーについては読んだ奴に教えてもらえ」
あるいは、
「報告書?そんなもん、真面目に書いている奴はアホだ。いくつかテンプレートを作って、少し変えて出せばいいんだ。」
展示会においても
「もちろん、サクラは必須だ。誰が人のいないブースに来るんだ?バレないようにやれよ。」
などと言ったりする。
要は、ちょっとずつすれすれのところを狙うのである。批判されても仕方のない行為も中にはあると思うが、この感覚はビジネスにおいては重要で、うまくやるとそれは大きな成功となる。本質はUberやAirbnbも同じだ。
ビジネスにおいては、余計な制約を自ら設定すら必要はないということなのだろう。
ユニクロの創業者である柳井氏が敬愛する、米コングロマリットの総帥、ハロルド・ジェニーン氏は著書※1の中でこう述べる。
物事を行うには、会社の機構を通し、近道をせず、ルールに従ってやらねばならぬ。しかし、ルールに従って考える必要はない。物事がいつもなされるやり方に自分の想像力を閉じ込めるのは大なる誤りである。
実際、それは自分を市場の大勢に追随させるだけに終始させてしまうだろう。
成果をあげる人物はルールの中で考えない。ルールを無視し考え、うまく周囲を納得させるように動く。実際、ルールを作る者、ルールを破るものこそ、勝者である
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※1プロフェッショナル・マネジャー(プレジデント社)
(Photo:Ramon Rosati)